2010年12月23日木曜日

第9回社会運動ユニオニズム研究会(終了)

日 時:2010年12月23日(木)
報告1:Asia Floor Wage(アジア最低賃金)キャンペーンと地域における賃金の引き上げ
  報告者:ステファニー・ルースさん
      (ニューヨーク市立大学マーフィー労働者教育・労働研究機構・准教授)
報告2:中間選挙後の米国の労働者と労働運動をめぐる状況とLabor Notesの戦略
  報告者:マーク・ブレナーさん(Labor Notes・ディレクター)
通 訳:ルイス・カーレットさん、山崎精一さん
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12月に米国から活動家でかつ研究者であるステファニー・ルースさん(ニューヨーク市立大学)とマーク・ブレナーさん(Labor Notes)が来日されます。今回の研究会では、お二人の報告を受けて、労働運動の現状や今後の運動戦略について相互に交流議論をしました。

当日の報告内容は『労働法律旬報』に掲載しました。以下からダウンロードできます。

翻訳・構成 山崎精一「社会運動ユニオニズム研究会報告--アメリカから二人の活動家&研究者を交えて」『労働法律旬報』1738号(2011年2月25日発行)掲載

また、近日中に、ビデオ映像(YouTube)を公開予定です。

■ステファニー・ルース(Stephanie Luce)さん:2010年から現職。マサチューセッツ大学アマースト校レイバーセンターで米国各地の生活賃金条例制定運動を調査してこられました。2001年に来日され研究会で報告を受けました(「アメリカにおける生活賃金運動」国際労働研究センター編著『社会運動ユニオニズム:アメリカの新しい労働運動』緑風出版、2005年を参照)。その後、研究と活動の領域を広げられ、アジアのアパレル産業の下請労働者の賃金を引き上げるAsiaFloorWage(アジア最低賃金)キャンペーンに、欧米アジアの労働組合や労働NGOと共に関与しながら、研究を進められています。これは先進国労働運動が連帯した南の世界の新しい賃金引き上げ運動のモデルとして提起されています。このキャンペーンについて報告をいただきました。

Asia Floor Wage(最低賃金)キャンペーン
http://www.asiafloorwage.org/

■マーク・ブレナー(Mark Brenner)さん:マサチューセッツ大学アマースト校の教員を経て、2005年から現職。LaborNotesは、アメリカの労働組合の改革派や草の根の活動家たちの全国的なネットワーク。2年に1回、全国交流集会をデトロイトで開催しています。共和党が勝利した中間選挙の結果を受けて、労働者・労働運動をめぐる状況と、それに対し労働運動はいかなる運動を展開しているのか、特にLaborNotesの運動と戦略について報告いただきました。

Labor Notes
http://www.labornotes.org/

■後援:Labor Now(開催費用について助成を受けました)

2010年10月13日水曜日

第8回研究会のビデオ記録をLaborNowTVにアップしました。

以下のアドレスをクリックするとLaborNowTVのサイトに飛びます。
http://www.jca.apc.org/labornow/labornowtv/konohito/tabata.html

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第8回社会運動ユニオニズム研究会(終了)
〜幸せになる資本主義
日 時:2010年8月23日(月)
テーマ:幸せになる資本主義
報 告:田端博邦さん(東京大学名誉教授)
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[以下は開催呼びかけ文です]

今回の研究会では、田端博邦さんの新著『幸せになる資本主義』(朝日新聞出版、2010年6月)を取り上げます。

昨年、歴史的な政権交代が実現したかにみえました。今年7月の参院選では与党の敗北という結果に終わり、やはり世の中は変わらないのではないか、という失望 感が広がっているようにみえます。田端さんは、日本の政権交代というよりも、リーマン・ショックの金融危機やアメリカのオバマ政権の成立が世界を変えるの ではないか、と主張します。

2〜3年前と比較すると世の中の雰囲気はかなり変わっています。いまは「新自由主義の時代」が終わりを告げる 世界史の転換点にあるのではないでしょうか。この本には歴史の進み方は複雑だという指摘もあります。私たちの日常的な活動の意味や、日本の労働運動の将来 を考えるうえで、役立つヒントが得られるのではないかと思います。

研究会では、田端さんを交えて資本主義の現在と未来、私たちの労働や生活、今後の労働運動のあり方を議論したいと思います。ご関心あるみなさまの参加を呼びかけます。

なお、今回の研究会はビデオ録画を行い、後日、インターネット上で配信致します。そのため、対談方式を取り入れるなど通常の研究会とは異なった開催方法となります。また、出席者のみなさまにご協力をお願いすることもありますので、あらかじめご了解ください。

2010年5月26日水曜日

第6回・第7回研究会を開催しました

第6回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:5月22日(土)
テーマ:ヨーロッパの社会経済改革に学ぶ~オランダの挑戦を中心に
報 告:久保隆光さん(明治大学商学部兼任講師)
共 催:明治大学労働教育メディア研究センター

当日の報告内容をもとにした論文を『労働法律旬報』に掲載しました。

オランダにおける社会政策の展開とワーク・ライフ・バランス政策への収斂(上)」〔『労働法律旬報』1730号(2010年10月25日発行)掲載〕
オランダにおける社会政策の展開とワーク・ライフ・バランス政策への収斂(下)」〔『労働法律旬報』1732号(2010年11月25日発行)掲載〕

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第7回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:5月26日(水)
テーマ:国際運輸労連(ITF)の歴史と課題
報 告:浦田誠さん(国際運輸労連本部内陸運輸部会部長)

当日配布資料はここをクリックすればダウンロードできます。

当日の報告内容をもとにした論文を『労働法律旬報』に掲載しました。
浦田誠「ITFの歴史と題課」〔『労働法律旬報』1734号(2010年12月25日発行)掲載〕

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[以下は開催呼びかけの案内文です]
第6回社会運動ユニオニズム研究会
ヨーロッパの社会経済改革に学ぶ~オランダの挑戦を中心に

オランダはワークシェアリングを社会全体で敢行し、失業の改善に成功しています。また、非正規雇用労働者と正規雇用労働者の労働条件を均等化し、同一価値労働・同一賃金の確立、社会保険加入などが進み、社会格差が是正されています。

この社会経済改革(オランダ・モデル)によって、オランダでは夫婦やカップルがお互いにパートで働く、あるいはパートとフルタイムの組み合わせ働く「コンビネーションモデル(1.5稼ぎ)」という新しい労働のあり方が生まれ、ワークライフ・バランスが実現可能な社会になっているといわれています。また、オランダやデンマークでは、「労働時間の調整」「解雇の自由」という『フレキシビリティ(柔軟性)』と、『セキュリティ(社会保障)』とを抱き合わせた『フレキシキュリティー』という政策が導入されています。この政策も新しい労働社会のあり方のひとつとして注目されています。

そこで第6回となる本研究会では、久保隆光さんをお招きして、オランダ・モデルを中心にご報告いただき、日本の現状を改善する糸口を探してみたいと思います。久保さんは、オランダの労働市場改革などを中心に研究され、明治大学商学部の兼任講師を務められています。

日 時:5月22日(土)
テーマ:ヨーロッパの社会経済改革に学ぶ~オランダの挑戦を中心に
報 告:久保隆光さん(明治大学商学部兼任講師)
共 催:明治大学労働教育メディア研究センター
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第7回社会運動ユニオニズム研究会
国際運輸労連(ITF)の歴史と課題


今回はGUF(Global Union Federation、国際産業別労働組合組織)の一つである「国際運輸労連(ITF)」に焦点をあてて研究会を開催します。

ITFは、ロンドンに本部を置き、陸海空の労働組合が世界154ヶ国から加盟しています。ITFの結成は、ロッテルダムの港湾ストを英国船員が支援したことを直接的な経過とし、1896年7月に結成されました。以来100年余の道のりの中で、世界大戦や東西冷戦などの影響を受けながら、紆余曲折を経て今日まで活動を続けています。とりわけ、90年代以来のグローバリゼーションの大波を受けて、ITFの活動もかつてないほど重要性を増し、多様な取り組みが実践されてきました。

本研究会では、私鉄総連出身で、ロンドンのITF本部に勤務されている浦田誠さんに、ITFの100年余の歴史と現状、今後の課題について報告いただき、グローバル化の時代の国際労働運動のあり方について議論していきたいと思います。

第7回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:2010年5月26日(水)
テー マ:国際運輸労連(ITF)の歴史と課題
報 告:浦田誠さん(国際運輸労連本部内陸運輸部会部長)      

[浦田誠さんから寄せられた報告主旨]
ITF(国際運輸労連)は、ロンドンに本部を置く国際労働団体で、陸海空の組合が世界154ヶ国から加盟しています。ITFの結成は、ロッテルダムの港湾ストを英国船員が支援したことを直接的な経過とし、1896年7月に結成されました。また、それ以前にも、産業革命による飛躍的な物流の発展により、モノを運ぶ交通運輸労働者の国際的な連携が歴史上初めて生まれ、ロンドンの港湾ストにブリズベーンの組合がカンパを送ったり、アイルランドの船員労組が海外に支部を結成した史実がITFの前史に記されています。

しかし、労働者の団結はいつの時代も、政府や使用者から疎んじられるもので、ITFの結成と同時に活動家たちがブラックリストに載せられ、直後のハンブルグ港争議で敗北するなど、1904年には早くも本部をドイツに移転し、鉄道労組の指導の下、労使協調路線を敷き、加盟人員の拡大に努力する時期に入ります。しかし、これも第一次世界大戦の勃発で、重大な危機に直面します。各国の組合がそれぞれの政府の戦争政策を支持したため、労働者の国際連帯は止まり、ITFも数年間機能停止に陥ったのです。ようやく1919年にアムステルダムで再建大会を勝ち取り、オランダ人指導者、エド・フィメンの下、ファシズムに反対する運動と欧州以外の組合を勧誘する活動を展開します。

このように、ITFの歴史は大きな紆余曲折をその後も数回重ね、今日に至っています。とりわけ、この10年はグローバリゼーションの大波の中、ITFの活動もかつてないほど重要性を増し、多様な取り組みが実践されてきました。この先10年あるいは20年を見据えるためには、過去を謙虚に学ぶことが必要です。「歴史は繰り返す」というなら、また停滞の時期を経験するのか。それともこれまで蓄えた力を残し、新たなる課題に立ち向かっていくのか。ITFは、大きな岐路に立たされているのです。

こうした113年の歴史を研究会では検証すると共に、参加者の皆さんの体験などに照らし合わせた上で、ITFに留まらず、広範な国際労働運動の将来について議論できれば幸いです。とりわけ、私が担当する部会では、ITFの活動をできるだけ職場に近いところで設定できるよう近年努力してきました。果たしてそのアプローチが日本の皆さんにも通用するのか、ご意見頂きたく思います。

どんな時代であれ、どんな課題を背負うにせよ、労働者の国際連帯を促進させることがITFの使命であります。そうした意味では、イランの労働運動を支援する闘いや、トルコの大量解雇者撤回闘争など、ここ数年で大きな盛り上がりを見せた運動もあります。そこで使われた様々なキャンペーン技術を検証し、これをどのように応用していくことができるのかもいま大きく問われています。アメリカでは、SEIU委員長が引退を表明し、イギリスではかつてないほどスト権などの権利が蹂躙されています。こうした時代の流れを敏感に感じ取りながら、次の時代を創っていく議論ができれば幸いです。

浦田誠(国際運輸労連内陸運輸部会部長

2010年4月18日日曜日

第5回社会運動ユニオニズム研究会を開催しました

日 時:4月17日(土)
テーマ: 労働運動をジェンダー視点で振り返る〜 女性労働運動の現状と課題
報 告:片岡千鶴子さん(連合男女平等局長)

本研究会では、第3回で元連合会長の笹森清さん、第4回では連合副事務局長の山本幸司さんに、連合運動の20年の総括や政権交代・経済危機と今後の運動課題について報告いただき議論してきました。本研究会では、このテーマを女性労働運動に焦点をあてて議論しました。

女性労働者の過半数が低賃金かつ不安定雇用の非正規労働者であり、経済危機下、更に厳しい状況に置かれています。産休・育休切りも頻発しています。このよう な状況のなかで、男女平等や均等待遇をどう進めるのか、安心して働ける職場をどう作って行くのか、課題は山積みです。他方、政権交代によって、男女平等参 画を推し進める政策実現のチャンスも到来しています。

連合男女平等局長の片岡千鶴子さんに、ご自身の実践経験(単組やサービス連合での取り組み、審議会での議論)や連合運動のなかでの取り組み、政権交代や経済危機下での新たな課題と今後の展望について報告をいただき、議論を進めました。

片岡さんは、JTBに入社後、JTB労組執行委員、サービス連合中央執行委員(専従)、(社)教育文化協会をへて、2007年より連合男女平等局長を務められています。

報告内容を中心とした論文を『労働法律旬報』に掲載しました。

片岡千鶴子「労働運動をジェンダーの視点で振り返る:女性労働運動の現状と課題」〔『労働法律旬報』1726号(2010年8月25日発行)掲載〕

2010年2月13日土曜日

第4回社会運動ユニオニズム研究会を開催しました

日 時:2010年2月13日(土)
テーマ:労働法改革の基盤と方向性
報 告:水町勇一郎さん(東京大学社会科学研究所教授)
司 会:田端博邦さん(東京大学名誉教授)

派遣法の改正問題に見られるように、政権交代後、これまでの労働法制の動きには大きな変化が生まれつつあります。これまでの規制緩和一辺倒の改革から、労働者の権利や雇用安定をめざす方向へと立法政策の動向は変わりつつあるといってよいでしょう。労働市場や職場の現状を変える上で、どのような望ましい労働法制をつくりあげるかという構想力をもつことは、労働運動にとっても重要な課題になっているといえます。

2009年春に発表された連合総研のプロジェクト「イニシアチヴ2009-労働法改革のグランドデザイン」の主査をつとめられた水町勇一郎さんを迎えて、これからのあるべき労働法制の姿について議論を深めました。

派遣、有期などの非正規雇用にかかわる労働市場法制、長時間労働問題を解決するための労働時間法制、労働者の発言権を組織するための集団的労使関係法における方策(労働者代表制)など、プロジェクト研究が取り上げている論点は労働法制全体にわたっています。

報告内容を中心とした論文を『労働法律旬報』に掲載しました。

水町勇一郎「『上からの命令』『多数者による決定』から『現場・少数者の意見の反映・尊重』へ:『労働法改革』のための議論のポイント」『労働法律旬報』1724号(2010年7月25日発行)

プロジェクト研究の成果:
連合総研のホームページ(連合総研のホームページ「イニシアチヴ2009-労働法改革のグランドデザイン」
水町勇一郎・連合総研編『労働法改革:参加による公正・効率社会の実現』(日本経済新聞社出版社、2010年)

報告者紹介:水町勇一郎さん(東京大学社会科学研究所准教授)。現在、労働法理論の第一線で活躍されている労働法研究者。著作に、『パートタイム労働の法律政策』(有斐閣、1997年)、『労働社会の変容と再生-フランス労働法制の歴史と理論』(有斐閣、2001年)、『集団の再生-アメリカ労働法制の歴史と理論』(2005年)、『労働法(第2版)』(2007年、有斐閣)など。