2012年12月17日月曜日

スペイン15M:経済危機の下で「怒れる者たち」が創る市民運動


(開催終了)
社会運動ユニオニズム研究会では、直接行動が社会を変えるとの視点からウォール街占拠(OWS)運動や脱原発運動を取り上げて議論してきました。今回はOWS運動に大きな影響を与えたスペインの15M運動を取り上げました。日本でも総選挙の結果、小選挙区制を基礎とした間接民主主義が極端な結果をもたらし、多様な民意とのズレが明らかになった今、社会運動の再構築が問われています。まずはスペインの運動実践から学びたいと思います。
======================
30回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:2013126日(土)13301730
テーマ:スペイン15M:経済危機の下で「怒れる者たち」が創る市民運動
ゲスト:工藤律子さん(ジャーナリスト)
共 催:一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now

工藤さんの報告部分をUstreamで中継しました。アーカイブス(録画)は以下でご覧いただけます。
http://www.ustream.tv/recorded/28809945

配布資料(一部抜粋版)
http://www.jca.apc.org/labornow/SMU/ResumeKudoSMU20130126forWeb.pdf

2011515日(15 de mayo15M)、スペインで新たな市民運動が生まれた。「ウォール・ストリートを占拠せよ」に先立つ、先進国発の広場とネットを駆使した市民運動「15(キンセ・エメ)」だ。15Mは、深刻な経済危機に喘ぐスペインの人々の「怒り」と「創造力」、そして「歴史的伝統」に基づいて動き出し、発展している。

スペインでは201210月末、失業率が25.02%に達し、失業者数は577万人以上となった。約173万世帯で、労働力世代の家族全員が失業しているという。この事態を前に、首都マドリードだけでもいまや、毎日平均8つのデモが行われるほど、市民は憤慨している。

この経済危機の主な原因は何か? 危機に対して、政府はどんな政策をとったのか? 事態を前に市民はどんな暮らしを迫られ、どんな思いを抱えているのか? そんななか生まれた市民運動が目指すものは? またその問題点は? 

工藤律子さんに、20125月の取材とその後の情報に基づき、15Mの背景と実像を、統
計資料、写真、映像を交えて報告いただいた。

参考文献
工藤律子「『怒れる者たち」が創る市民運動」『世界』2012年8月号。

(プロフィール) 工藤律子(くどう・りつこ)さん
ジャーナリスト。1963年大阪府生まれ。東京外国語大学地域研究研究科修士課程在籍中より、メキシコの貧困層の生活改善運動(都市大衆運動)を研究するかたわら、フリーのジャーナリストとして取材活動を始める。社会・市民運動関係では、メキシコのサパティスタ運動、「Yo soy 132運動」、「正義と尊厳ある平和運動」、フィリピンの政治的殺害・誘拐の停止と真相究明運動、スペインの「15M」運動などを取材。

著書に「仲間と誇りと夢と」(JULA出版局)、「ストリートチルドレン」(岩波ジュニア新書)、「ドン・キホーテの道」(論創社)、「フィリピン・私の家族は国家に殺された」(長崎出版)などがある。NGO「ストリートチルドレンを考える会」共同代表。

2012年12月6日木曜日

現代中国の労働運動 その実像、虚像と将来像


29回社会運動ユニオニズム研究会(終了)
日 時:2013119() 14:00-17:45
テーマ:現代中国の労働運動 その実像、虚像と将来像
ゲスト:エレン・デービッド・フリードマンさん(中国広州・中山大学客員研究員)
通 訳:松元 千枝さん (レイバーネット日本 国際部長)
共 催:一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now


現代の中国は共産党の一党独裁を維持したまま急激な工業化、経済の開放、都市化の過程にあり、巨大な転換期にある。公認の労働組合である中華全国総工会は21世紀に入って農民工を組織化し始めたため組織率は上昇しているものの、労働者の権利を守るという労働組合としての機能を果たしておらず、その正統性の危機に直面している。労働者の権利を求める声と運動は山猫のストライキ、デモなどの形態で噴出しており、草の根の労働者運動は激動している。

この中国労働運動に注目して2000年から中国に渡っているアメリカの労働運動活動家を講師に招き、中国労働運動の現状と将来、その担い手である中華全国総工会と草の根の労働団体について聞きました。さらに、新たに設立された中山大学・国際共同労働研究センターの取り組みについて報告いただきました。


当日の研究会の様子を以下のサイトでアーカイブス(録画)を視聴できます。

報告パワーポイント THE RESISTANCE OF CHINA’S WORKERS AND WHAT IT MEANS TO LABOR ACTIVISTS AROUND THE WORLD (日本語訳つき)

レイバーネットの報告記事
http://www.labornetjp.org/news/2013/ellendf

====================================
なお、フリードマン氏は、以下に案内する法政大学大原社会問題研究所主催の「国際交流講演会」でも講演をしました。

法政大学大原社会問題研究所国際交流講演会
日 時:2013115日(火)14:00-17:00
講演者:エレン・デービッド・フリードマンさん(中国広州・中山大学客員研究員)
テーマ:中国の2つの「労働者階級」の収斂と抗議行動
通 訳:鈴木 玲さん(法政大学大原社会問題研究所教授)

中国の国営企業では、正規労働者の間での雇用劣化、および雇用の非正規化が進んでいる。国営企業で雇用劣化・非正規化によって形成された「労働者階級」は、農民工から構成されるもう一つの「労働者階級」と労働条件、社会保障の面で劣悪な水準に収斂している。同時に、これらの2つの労働者階級は山猫ストなどにより経営者に対する抗議行動を強めている。この講演は、収斂および抗議行動の動向およびその背景にある構造的失業についても触れた。

--------------------------------------------------------------------
(プロフィール) エレン・デービッド・フリードマン(Ellen David Friedman)

ハーバード大学で人類学と政治学を学び、1974年卒業。バーモント州で地域運動に従事した後、80年代にはUE(全米電機ラジオ機械工労組)AFSCME(アメリリカ州郡自治体従業員組合連合)のオルグに従事する。その後20年にわたりバーモント州のNEA(全米教育連盟)の組織教育局長として働きながら、地域での生活賃金運動、ワーカーセンター、バーモント州進歩党などの活動に携わる。2000年から中国を訪問し、中国労働運動との関係を築く。2006年春から広州市の中山大学社会事業学部の客員研究員となり、毎年一学期ずつ
社会事業の授業を受け持ち、次第にテーマを労働研究に移行してきた。2009年にはケイティー・クワン(UCBerkeley)などと共に中山大学に国際共同労働研究センター(International Joint Center forLabor Research at Sun Yat Sen University) を設立した。

現在は同センターを中心に活動し、中国とアメリカ、中国とドイツなどとの間の労働者、研究者、学生、ジャーナリストなどの相互訪問、交流、共同研究などに主に取り組んでいる。

2012年11月25日日曜日

韓国の民主化と在日韓国人元良心囚の再審裁判の現状と課題

第28回社会運動ユニオニズム研究会(終了)
日 時:2012年12月8日(土)13:30 – 17:00
共 催:法政大学大原社会問題研究所
    一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now

テーマ:韓国の民主化と在日韓国人元良心囚の再審裁判の現状と課題
報 告:金元重さん(千葉商科大学教員、Labor Now会員)

諸事情でUstreamによる中継・録画保存は中止となりました。
=================================
金元重さんは1975年、韓国ソウル大大学院に母国留学中に、「留学生学園浸透スパイ団事件」の一人として中央情報部によって拘束され、起訴されて懲役7年の有罪判決を受け大田刑務所で服役、1982年12月刑期を終え出所しました。事件から36年後の2011年4月再審申請をし、今年(2012年)3月29日ソウル高等法院で再審無罪判決を受けました。

今回の研究会では、1970年代朴正煕(パクチョンヒ)政権の維新体制期に生じた在日韓国人留学生スパイ事件の背景や経緯、裁判と獄中での生活、今回再審を受けるようになった金元重さんの体験を語ってもらうと同時に、2000年代に入って韓国で急速に進んだ「過去の出来事の真実究明と清算・和解」をめぐる一連の民主化の動きについて報告していただきました。

参考文献:木村貢「韓国『民主化』のなかの在日韓国人:スパイ捏造事件-四半世紀のときを超えて」『世界』2012年10月号。

2012年11月24日土曜日

若者の雇用状況と必要とされる雇用政策、労働組合の取り組み

Ustreamによる中継録画は以下から視聴できます。

(1)報告 http://www.ustream.tv/recorded/27256320 
(2)質疑・討論1 http://www.ustream.tv/recorded/27258453
(3)質疑・討論2 http://www.ustream.tv/recorded/27258734
質疑・討論1と2の間に中継中断あり。
=============================
第27回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:2012年11月25日(日)14:00~18:00
主 催:一橋大学大学院社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now
テーマ:若者の雇用状況と求められる雇用政策と労働組合の取り組み
トークゲスト:
(1)後藤道夫さん(都留文科大学):若者の雇用状況と求められる雇用政策(ここからダウンロード:報告レジュメPDF)
(2)龍井葉二さん(連合総合生活開発研究所):二つの時間軸から見た<若者雇用>(ここからダウンロード:報告レジュメPDF)
(3)成田恭子さん(日本教職員組合):学校現場から見た若年者雇用と労働教育(ここからダウンロード:報告レジュメPDF)
90年代末からの就職氷河期以来、若者の雇用状況の悪化が議論されてきました。若者の非正規労働者比率の増加、就職率の低迷、学校から職場への接続をめぐる問題などが指摘されてきました。文科省はキャリア教育を推進しています。しかし、若者自身の能力や態度の問題以前に、長時間労働など職場の労働条件の悪さが定着率を下げる原因となっています。
そこで、本研究会では若者の雇用状況と必要とされる雇用政策、そして、労働組合の取り組みに焦点をあてて、議論しました。


2012年10月23日火曜日

アメリカのコミュニティ・オーガナイズNPOでの気づきと市民参加にについて


アメリカから一時帰国される鎌田華乃子さんをトークゲストに以下の研究会を企画しました。鎌田さんは、ハーバード大学ケネディスクールで民主主義、市民参加について学び、現在はコミュニティー・オーガナイズのNPOで活動しながら学んでいます。

「コミュニティー・オーガナイズ」は日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、具体的な内容についてお話しいただきながら、日本の社会運動・労働運動との比較しながら議論しました。
=============================
第26回社会運動ユニオニズム研究会
日 時:2012年11月22日(木)18:30~21:00
主 催:一橋大学フェアレイバー研究教育センター    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now

テーマ:ケネディスクールで学んだ民主主義、市民参加についてと現在のコミュニティー
オーガナイズのNPOでの気付きについて

ゲスト:鎌田華乃子さん(Fellow, Center for Popular Democracy:人々のための民主主義センター研究員)

<プロフィール>
神奈川県横浜市生まれ。1歳半から6歳まで仙台で過ごした以外は横浜で育つ。日本大学生物資源科学部農芸化学科を卒業後、外資系商社に就職、4年間化学品の輸出入、新規化学物質登録に従事する。その後、外資系環境コンサルティング会社に転職し、7年半勤務。環境法令調査、新規化学物質登録、環境デューディリジェンス、遵法監査といったコンサルティング業務に従事する傍ら、新規ビジネス開拓も手がける。

2011年7月から2012年5月までハーバードケネディスクールに留学し、Master in Public Administration(行政学修士)のプログラムを修了。

現在はニューヨーク・ブルックリンにあるコミュニティー・オーガナイズ(政治的弱者を団結させ、政治に声を届ける活動)NPOにて市民参加の様々な形を現場で学んでいる。

Center for Popular Democracy(人々のための民主主義センター)のサイト(英語)
http://populardemocracy.org/

2012年8月2日木曜日

直接行動で社会を変える−−ウォール街占拠運動から日本の脱原発運動


この間、社会運動ユニオニズム研究会では、ウォール街占拠運動と日本の脱原発運動に焦点をあてて議論をしてきました。そこで、いずれにも共通する直接行動で社会を変える視点から2つの運動の展開と現状、そして、その連関についてをテーマに2つの研究会を企画しました。連続開催となりますが、ご関心あるみなさんのご参加を呼びかけます。

=================================
第24回社会運動ユニオニズム研究会(終了)
直接行動で社会を変える(1)
     —ウォール街占拠運動の展開と現在
=================================

日 時:8月20日(月)18:30~20:30
テーマ:直接行動で社会を変える(1)—ウォール街占拠運動の展開と現在
トークゲスト: 高祖岩三郎さん(批評家/翻訳家、ニューヨーク在住)

ゲストの高祖さんは30数年にわたりニューヨークに在住して、翻訳や批評活動、社会運動に関与してこられました。準備段階からウォール街占拠運動に関与されてきた経験を踏まえて、ウォール街占拠運動とは何か、昨年11月15日の強制排除以後、占拠運動はどのように展開しているのか、そして、日本の脱原発運動との関連についてトークしていただきます。

当日の記録映像は以下でご覧いただけます。


=================================
第25回社会運動ユニオニズム研究会(終了)
直接行動で社会を変える(2)
   —3.11以後の脱原発運動の展開とこれから
=================================

日 時:8月25日(土)
テーマ:直接行動で社会を変える(2)—3.11以後の脱原発運動の展開とこれから
トークゲスト:木下ちがやさん(大学非常勤講師、この間の官邸前金曜デモのスタッフ)
後藤悠一さん(一橋大学院生、この間の官邸前金曜デモのスタッフ)ほか
(Ustreamは都合により中止となりました)

3.11以後、脱原発運動が燎原の火のごとく拡がっています。3月に300人で始まった毎週金曜日の官邸前での大飯原発再稼働反対行動は、6月、7月と拡大を続け、道路に溢れた巨万の人々が官邸前や国会正門前を占拠し、解放空間を創り出しています。

そこで、官邸前デモに参加している方々をゲストに、311以後の脱原発運動、特にこの間の街頭行動に焦点をあてて、これまでの展開と今後、この運動の持つ意味、若者たちの意識、そして、ウォール街占拠運動など世界各地の運動との連関についてトークしてもらいます。

=================================
社会運動ユニオニズム研究会
主 催:明治大学労働教育メディア研究センター
Labor Now、一橋大学フェアレイバー研究教育センター
=================================

2012年6月11日月曜日

転換期における韓国の労働運動と市民運動

23回社会運動ユニオニズム研究会のご案内(終了)

日 時:2012714日(土)
テーマ:転換期における韓国の労働運動と市民運動
報告:安周永さん(アンジュヨン、京都大学大学院法学研究科助教) 
コメント:金元重さん(千葉商科大学教授)

共 催:一橋大学社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now
==================================


2012年は、韓国政治にとって非常に大きな意味をもつ年となるといわれています。すでに、ソウル市長に市民派のパク・ウォンスン氏を当選させることに韓国社会運動は成功しており、引き続いて、4月の国会議員選挙がたたかわれ、12月には大統領選がたたかわれるためです。こうした一連の選挙に韓国の労働運動・社会運動は、どのように対応しているのかを報告して頂きます。

特に、最近の動向として、労働運動と福祉・社会保障の充実を求める運動とが連携を始めており、福祉国家をめざす運動ネットワークが構築されつつあるという点について、日本との比較もしながらご報告いただく予定です。

なお、報告していただく安周永氏は、韓国から京都大学大学院に留学後に現在、京都大学助教であり、日韓の労働運動と政治体制について研究されています。

参考文献
安周永「韓国における政治的対立軸の変化:2012年大統領選結果を受けて」『労働法律旬報』1786号(2013年2月25日発行)


2012年5月23日水曜日

ウォール街占拠運動~労働運動が学ぶべきものは何か

第22回社会運動ユニオニズム研究会(終了)

日 時:2012年6月9日(土)
報告者:マット・ノイズさん(LaborNow運営委員、明治大学特任講師)
通訳:山崎精一さん(LaborNow共同代表、明治大学労働教育メディア研究センター客員研究員)
共 催:一橋大学社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
明治大学労働教育メディア研究センター
Labor Now
*当日は、Ustreamを使った中継を予定しています。
http://www.ustream.tv/channel/labor-now-tv
====================================
2011年9月17日にスタートしたウォール街占拠(OWS)運動は、「私たちは99%だ」をスローガンに、他の社会運動や労働運動を巻き込みながら爆発的な勢いで、2ヶ月間の占拠運動を続けました。11月15日の強制排除後は、各地域や様々な運動の中にオキュパイ(占拠)運動を広げ、運動を持続・拡大しています。5月1日のメーデーでは全米主要都市で、移民労働者や労働組合と共に大規模なデモ行進を行いました。
OWS運動は、労働運動をはじめ、既存の様々な社会運動に、大きなインパクトを与え、従来の社会運動のあり方そのものの変革を進めようとしています。その重要なポイントはコンセンサス・モデルと言われる合意形成重視の運動論です。指導者たちが集まって運動方針を決めて、目標に向かって、大衆(労働者)を動員する方法ではなく、誰でも参加できるジェネラル・アッセンブリー(総会)を開いて、時間がかかっても議論を尽くして合意を形成して、運動を進めています。
そこで、次回研究会では、既存の労働組合運動の運動論と大きく異なるOWS運動がアメリカ労働運動にいかなる影響を与えているのか、労働組合はOWSU運動から何を学ぶべきかを、マット・ノイズさんからご報告いただき、議論したいと思います。ニューヨークでOWS運動に関与している活動家・研究者と事前にやり取りしたインタビュー・ビデオの上映も予定しています。
マット・ノイズさんは、ニューヨークの組合民主主義協会(Association for Union Democracy)の運動に関わってきた活動家で、5月はじめにシカゴで開催されたレイバーノーツ大会にも参加されています。なお、ノイズさんは原則として英語で発言しますが、逐語通訳をいれます。
ご関心あるみなさんのご参加を呼びかけます。

2012年4月6日金曜日

4/27 日・独・仏・EUとの比較から有期労働契約法制を考える

第21回社会運動ユニオニズム研究会(終了)


3月17日に開催しました「有期労働契約法制と『有期』という働き方を考える」研究会では、多数の方が出席され、有期契約労働者の雇用を安定させ、権利を確立させていくには何が必要か、今回の労働契約法改定は現場にどのような影響を与えるのか、などについて活発に議論を行いました。特に、有期労働契約で働く当事者から「無期契約への転換制度は、5年までの雇い止めを増加させるのではないか」「転換が進まず副作用の方が多く出るのではないか」など危惧の声が出ました。

3月23日には、2月に出された法案要綱に沿って労働契約法改定案が閣議決定され国会に提出されました。

本研究会では、独・仏・EUなどの有期労働契約規制と比較しながら、今回の労働契約法改定案について議論しました。
============================================
日・独・仏・EUとの比較から有期労働契約法制を考える
日時:2012年4月27日(金)
報告(1)労働契約法改定案の概要:森崎巌さん(全労働省労働組合)  
  (2)日・独・仏・EUとの比較から有期労働契約法制を考える:       
       田端博邦さん(元東京大学社会科学研究所教授、比較労働法)
共 催:一橋大学社会学研究科フェアレイバー研究教育センター    
    明治大学労働教育メディア研究センター     
    Labor Now

報告資料:森崎レジュメ「労働契約法改定案の概要」
     田端レジュメ「有期雇用の法制をどう考えるかーEU、独、仏との比較で—

田端報告については、報告内容を中心に書き下ろしで『労働法律旬報』6月下旬号に論文を記載予定です。

当日の映像記録(Ustream)
森崎・田端報告編(89分)
http://www.ustream.tv/recorded/22175900
質疑議論編(50分)
http://www.ustream.tv/recorded/22188630

参考論文
田端博邦「有期雇用の法制をどう考えるか:EU、独、仏との比較で」〔『労働法律旬報』1770号(2012年6月25日発行)掲載〕

2012年2月9日木曜日

有期労働契約法制と「有期」という働き方を考える(終了)

第20回社会運動ユニオニズム研究会

現在、雇用労働者の3分の1以上、約1700万人がパートや契約、嘱託、派遣などの「非正規」と呼ばれる雇用形態で働いています。そして、その多くが「有期労働契約」という労働契約の期間を定めて働いています。定年までの雇用継続が予定されている正社員とは異なり、有期労働契約は、契約期間満了後の雇用の継続(契約の更新)がなされるのか否かが長年に問題となってきました。有期契約で働く労働者の多くが、雇い止め(契約満了で雇用を打ち切ること)を恐れて、有給休暇の取得すらできない、権利主張ができない状態に置かれてきました。有期労働契約故の雇用の不安定さをどう解消し、権利を確立できるかが、課題となってきました。

有期労働契約をめぐっては、厚生労働省の有期労働契約研究会が2010年に報告を出し、労働政策審議会が審議の結果、2011年12月に建議を出しました。建議では、(1)有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応として、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申出により期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みを導入すること、(2)「雇止め法理」の内容を制定法化、(3)期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消などについて、次期通常国会における労働契約法改正をはじめとする所要の措置を講ずことが適当であるとしています。

特に無期契約への転換制度は、まったく新しい法制度を創出するものです。無期契約への転換が促進されるのか、5年を超える以前の雇い止めを誘発するのか、制度の効果を、現実の有期契約の実態を踏まえながら慎重に検討する必要があります。

研究会では、有期労働契約という働き方の実態を踏まえつつ、求められる有期労働契約法制と労働契約法改定について、議論しました。
==================================
有期労働契約法制と「有期」という働き方を考える
日時:2012年3月17日(土)
報告(1)有期労働契約法制と労働契約法改定について(仮題):宮里邦雄さん(弁護士)
(2)有期労働契約の類型と労働契約法改定の影響について:森崎巌さん(全労働省労働組合)
共 催:一橋大学社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター Labor Now

※宮里邦雄弁護士の報告は、『労働法律旬報』5月下旬号に掲載しました。以下からPDFファイルをダウンロードできます。

宮里邦雄「有期労働契約の法規制:有期労働契約に関する労働契約法改正について」〔『労働法律旬報』1768号(2012年5月25日発行)掲載〕

2012年1月17日火曜日

ウォール街占拠(OWS)運動と労働運動について

19回社会運動ユニオニズム研究会(終了)

昨年9月17日に始まったウォール街占拠(OWS)運動は、ニューヨークから全米各都市へ、世界へと拡がっています。OWSのスローガン「我々は99%」は、多くの人々の共感を得ています。1%である世界を支配する金融機関や富裕層に対する闘いとして、労働運動や様々な社会運動と合流しています。OWS運動は広場を占拠し、「ジェネラルアッセンブリー」を通じた徹底した直接民主主義の実践によって、社会運動のあり方そのものの変革を求め、社会的諸関係の変革をもめざしています。
次回研究会では、11月にニューヨークで3週間にわたりOWS運動を調査してきた青野さん、高須さん、12月に、レストラン機会センター(ROC)が主催したレストラン労働者国際会議に参加し、ニューヨークにも立ち寄って来られた河添さんの報告を受けて、アメリカの新しい社会運動と労働運動について議論しました。

================================
日 時:2012日(土)(終了)
テーマ:アメリカの社会運動ユニオニズムの現状
報 告:ウォール街占拠(OWS)運動と労働運動について
     青野恵美子さん(明治大学労働教育メディア研究センター、Labor Now
     高須裕彦さん(一橋大学フェアレイバー研究教育センター、Labor Now
    レストラン機会センター(ROC)とレストラン労働者国際会議について
     河添誠さん(首都圏青年ユニオン)
共 催:一橋大学社会学研究科フェアレイバー研究教育センター
    明治大学労働教育メディア研究センター
    Labor Now



青野恵美子・高須裕彦「ウォール街占拠運動:新しい社会運動の可能性(下)」〔『労働法律旬報』1774号(2012年8月25日発行)掲載〕